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がんリスクスクリーニング検査とは、がんの有無を調べるのではなく、「がんである可能性」を調べる検査です。

がんは早期発見を行うことで、その後の生存率が大きく変わるということが広く知られております。国立がん研究センターから発表されているステージ別の5年生存率のデータを見ると、肺がん患者が「ステージ1」で発見された場合の5年生存率は、実に85%、大腸がんであれば5年生存率は98%といわれております。
このデータを見てもわかる通り、がんは今や早期発見することで十分に、治療できる病気になりつつあります。
そのためにも早期発見につながる、がん検診は定期的に行っておくことが重要といえます。

一般的にがん検診は、胃、大腸、乳房、子宮、前立腺など特定部位のみを調べるものが一般的で、本当の意味で全身をくまなく検査をしようとしたら、費用も時間も大幅にかかるという課題もあります。また現在の画像診断検査では、がんの大きさがおおよそ1センチを超えないと見つけることができません。
しかし、1センチの段階では約10億個のがん細胞があり、乗数で分裂増殖していくので、1センチを超えたあたりからがんは加速度的に進行します。

そのため約半年~1年でステージ2や3にまで進行するがんも珍しくなく、そうなると一気に命を脅かすリスクが高まります。
がんは安全に発見できる期間が実は非常に短いとも言えます。

仕事や子育て等で忙しい人が数年がん検査を怠ったために、発見した時には進行がんになってしまったり、いくつかの部位は毎年検査を受けていたのに、検査をしていなかった部位でがんが発見され、同じく見つかった時には手遅れになったというケースも多くあります。女性は乳がんだけを、煙草を吸う人は肺がんだけをチェックすればいいというわけではありません。そういった意味では、本来は毎年全身の精密ながん検査を行う必要があるともいえます。

全身のがん検診が必要とわかっていても、時間やお金がかかるため定期的に受診することは難しいこともまた事実です。そんな中、近年は唾液・尿などを使ってがんのリスクを判定する簡易検査や、遺伝子検査キットが登場しています。これらはがんリスク・スクリーニング検査とも呼ばれます。受診者の心身に負担なく手軽に行える点がメリットでしょう。一方で検査精度に不安がある方には、血中のがん細胞自体を捕捉するような全身がんリスク検査も登場しています。
特定の部位の検査しか受けたことのない方や、時間が取りにくいなどの理由からなかなか全身がん検査を受けられない方は、こういったがんリスク・スクリーニング検査もうまく活用しながら、がんの早期発見につなげていくことがお勧めです。

なお、がんリスク・スクリーニング検査は「がんの確定診断」をおこなうものではないことは十分理解しておきましょう。

検査の特徴

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査は、主に血液や尿などの体液の成分を測定することによって行う検査です。専用の分析装置を使って、血液や尿に含まれる腫瘍マーカーの値を測定します。がんの部位をある程度特定できたり、再発の兆候をつかめたりすることもあります。
一方で飲酒や喫煙などの生活習慣、飲んでいる薬、がん以外の罹患している病気などの影響により、がんの有無とは無関係にマーカーの値が高くなることもあります。反対に、がんがあっても値が高くならないこともあります。

腫瘍マーカーだけではがんの診断を確定できないため、参考になる検査のひとつとして、診察や画像診断検査などと合わせて使われることが多いです。また、マーカーの値が高くてもがんとは特定できません。がんの有無やがんがある場所は、画像検査などその他の検査の結果とともに医師が総合的に判断する必要があります。

唾液検査

唾液は血液や尿と同様に、体の中で生成される多数の小さな分子(代謝物)が含まれています。唾液中の成分のほとんどが血液由来ですが、がん細胞が増殖するなかで血液中に漏れ出した代謝物は血管を通って唾液中にしみ出されます。唾液によるがんリスク検査はこの特定の代謝物の濃度を測定し、解析するものです。
検査の種類によってはがんの部位まで特定できるものもあります。

痛みなど体への負担がほとんどなく、唾液を採るだけという簡便さはがんの早期発見につなげやすいといえますが、あくまでがんのリスクを調べる検査であり、がんがあると確定診断ができるものではありません。そのため唾液のがんリスク検査の結果によっては、内視鏡やCTなどの二次検査を受診することが推奨されます。

尿(線虫)検査

線虫がん検査は、研究用に用いられる小型の線虫を用いてがんのリスクを判定する方法です。嗅覚に優れた線虫が、がんの匂いに反応する習性を応用し、がんのリスクを匂いから間接的に判断するというものです。自宅で採尿して郵送するのみと、簡単に受検できます。

検査の結果でリスクが高いからといって、全身がん検査を行ってもがんが見つからないというケースもあります。リスク判定が高い場合は医師に相談するなど、適切な対応を行うとよいでしょう。

遺伝子検査

遺伝子検査を行うことで、総合的ながんリスクをはじめ、特定のがん遺伝子やがん抑制遺伝子の状況、がん細胞からの突然変異遺伝子検査やメチル化など、さまざまなことが調べられます。
あくまで遺伝的な傾向を知ることであり、現在がんかどうかの判定を行うには、他検査と合わせて総合的に判断しましょう。

その他のがんリスク・スクリーニング検査

がん検診はがんを特定する検査のため、CTやPETなどの国が認可した方法に限られていますが、がんリスク・スクリーニング検査は様々な検査方法が存在します。体内のがんから血液中に漏れ出したがん細胞そのものを抽出することでがんリスクを可視化する検査もあり、多くの研究が重ねられている検査もあります。

各検査の特徴も踏まえながら、自身の目的や用途に合わせ、選んでいくことが重要といえます。

検査の必要性

がんリスクを把握して、がんの早期発見やがん検査に活かしていく

がんリスク・スクリーニング検査は、がんの確定診断になるものではなく、あくまでも全身のがんのリスクを判断する検査となります。尿を使った簡便なものから、血中のがん細胞の個数まで捕捉してがんリスクを明示するものまで様々あります。

「がん検診は時間がかかる」「事前の食事制限や待機時間が面倒」といった声もよく聞かれます。特に体の不調を感じていないためがん検診自体が後回しになっている方は、がんリスク・スクリーニング検査もうまく活用していきましょう。
簡易的な傾向値だけを知るものでもよいのか、もしくは精度を追求した検査を定期的に行うのかは、ご自身の検査の目的に応じて選択してください。

ただし、がんリスク・スクリーニング検査を受けていたとしても、がん検査を全く受けないでいいわけではないので、併用しつつがんの早期発見につなげていきましょう。

受検費用

検査の種類や方法により大きく変わることも

がんリスク・スクリーニング検査は、血液、唾液、尿などの検体ごとに検査内容や手法が大きく異なるため、数万円程度から20万円超するものまで、費用もかなりばらつきがあります。

間接的なリスクを判断するものでよいのか、血中に漏れ出したがん細胞を特定するような精度を追求した検査を希望するのか、自分の目的に合った検査を選択してください。

がんリスク・スクリーニング検査は一般的に自由診療扱いのため、全額自己負担となります。

予約〜検査

がんリスク・スクリーニング検査前日

準備 血液やだ液などの検体によっては、検査前の8時間ほどは食事を控える、摂取する食事の内容など、前日の食事に制限がある場合があります。

がんリスク・スクリーニング検査当日

受診 医師・スタッフによる問診のあと、検体の採取を行います。

検査の種類によって異なる場合もありますが、当日は検査までの間は水以外の飲食は控えること、だ液採取の場合は歯磨きやマウスウォッシュ、口紅を控えるなどの注意事項がある場合があります。詳しくは受診する医療機関にて確認してください。

時間 5分で終わるものから数時間かかるものまで

がんリスク・スクリーニング検査終了後

時間 基本的には検査結果は後日、郵送または医療機関経由で受け取ります。約2週間〜1ヶ月後くらいが目安です。
代々木ウィルクリニック: 院長 太田剛志

この記事の監修ドクター

代々木ウィルクリニック: 院長 太田剛志

【略歴】
1999年 順天堂大学医学部卒業後、公益財団法人がん研究会有明病院婦人科勤務
2009年 順天堂大学付属練馬病院准教授
2015年 順天堂大学医学部付属順天堂医院准教授
2017年 同先任准教授

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