人間ドックとは?
人間ドックとは、疾患リスクの早期発見・早期診療を目的とする任意(自由診療)の健康診断であり、いまや、がん・心臓病・脳血管疾患など重大な疾患のリスクを調べるとともに、それらと密接な関係にある糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満(生活習慣病)や動脈硬化などのチェックに欠かせないとされています。
一般的に生活習慣病や動脈硬化は、自覚症状がほとんどないうちに進行するため、重大な疾患を発症する前に、人間ドックを定期的に受診することが、健康維持を希望する人のたしなみとさえいわれるほどの時代を迎えています。
受診費用
人間ドックの費用はおよそ3〜5万円
施設やコースによりますが、人間ドックの費用はおよそ3〜5万円が相場です。はじめて人間ドックを受診する場合、「どのコースを受診したらいいのか」と迷われる方も多いです。
これまで一度も人間ドックを受診したことがなく、現状気になる症状や自覚症状がないのであれば、まずは全身の健康チェックができる「スタンダードコース(基本コース)」を選択するとよいでしょう。
スタンダードコースは、その医療機関で設定されている「標準的なコース」を指します。多くは法定健診の検査項目に、がんリスクを血液で検査する腫瘍マーカーや上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、腹部エコー検査、便検査などが追加されます。
自費だからこそ、医療機関や検査項目に納得感が必要
人間ドックは医療機関によってかかる費用や受けられる検査項目が異なります。「株式会社 ニッセイ基礎研究所」の調査報告では、検査を受ける際の施設選びのポイントとして、「学会等が認定する施設」の推奨や、「受けたい項目を受けることができる施設」を選ぶこと、また「毎年同じ施設か、もしくはいくつかの異なる施設か」など、継続して受診することを前提に施設選びを行うよう、指摘しています。
人間ドックは病気のための「治療」ではなく、病気になる前に「予防」として受けるものなので、保険の適用や医療費控除の対象外となります。それだけに、できる限り納得して検査を選び、受診する施設を決めたいと考えるのは、自然な流れといえるでしょう。
検査の必要性
人間ドックを受診して病気を予防・健康寿命を延ばす
近年は、長生きの指標となる「平均寿命」よりも、元気で健康に過ごすことができる年齢の指標である「健康寿命」が注目されるようになってきました。長生きできたとしても、ベッドに寝たきりでは、人生を謳歌しているとはいいがたく、年齢を重ねても若々しく健康に過ごせることの方が大切であると考える人が、今増えてきているのです。
この健康を実現するためには、病気になる前に疾患リスクを発見して予防することが重要です。「人間ドック」を受診することで、たとえ病気にかかったとしても、症状があらわれる前に早期発見・治療ができれば、今後の健康寿命延伸にもつながります。
法定健診・メタボ健診よりも検査項目が多い
会社で受ける企業健診は「法定健診」といい、労働安全衛生法に基づいた法的に必要な最低限の検査項目のみが設定されています。そのため、気になっている症状をピンポイントでチェックしたり、より詳しく調べたりすることはできません。また、法定健診の検査項目には「診察」が含まれていますが、医師との相談時間は限られています。
人間ドックでは、法定健診やメタボ健診よりも検査項目が多いだけではなく、気になる症状に合わせて検査を選んだり、オプション検査を追加したりすることができます。
また検査結果についても、すぐに治療が必要な所見がない場合、基本的には報告書送付のみであることが多いですが、人間ドックでは検査結果を踏まえて、対面で健康改善のためのアドバイスをもらえることもあります。
自分の健康状態に合わせて検査内容を組み替えられるのが、人間ドックの特徴の一つです。
検査内容
施設や受診コースによって異なる
検査項目は、身体計測、血圧、心電図、眼科検診、聴力検診、呼吸機能検査、胸部エックス線、上部消化管エックス線(もしくは上部消化管内視鏡)、腹部超音波検査、血液検査、尿検査、便潜血検査、内科検診を含むことが一般的です。施設によって重要視している疾患リスクが異なる場合は、検査項目が追加・変更されていることもあります。
血液検査 | 肝機能や腎機能など、各機能を血液から調べます。 |
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尿検査 | 尿を取り尿中に糖・蛋白・潜血がないかを調べます。 |
血圧測定(血圧脈波検査) | 高血圧か否か、選別を行います。 |
視力検査 (視力測定) | 裸眼もしくはメガネやコンタクトレンズをつけて視力を測定します。 |
眼圧検査 | 緑内障および網膜剥離などをチェックするために行われます。 |
眼底検査 |
眼底は直接的に血管を観察できる場所です。眼科領域だけでなく高血圧症・糖尿病といった血管に影響が出ることのある内科疾患に関しても重要な検査になります。 コンタクトを使用している人はメガネや、コンタクトをはずした後保管できるケースなどを持参しましょう。 |
心電図 | 胸に6個・手足に4つの電極を付けて安静時・負荷時の心臓の状態を調べます。 |
予約〜検査
人間ドック検査前日
準備 |
食事制限のある検査項目がいくつかあるため、前日は21時までに食事を済ませましょう。 当日午前中に受ける検査内容により水分の接種も制限されることがあります。事前に確認しましょう。 当日に便や尿の提出を指示されているときは、尿なら朝一番の尿、便もできれば当日か無理なら検査日に近い日にとったものを持参しましょう。 移動中の保管はできるだけ冷暗所を心がけましょう。 |
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人間ドック検査当日
問診 |
検査項目に上部消化管内視鏡(胃カメラ)か下部消化管内視鏡(大腸カメラ)が含まれている場合、事前に注意点などの説明があります。 内視鏡検査では、飲み込みにくいとき麻酔薬を使うこともあるので、過去に麻酔薬でアレルギー反応が出たことがあった人は、事前に医師に必ず伝えましょう。 |
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時間 | 日帰りの場合は1~3時間ほど(検査項目が多く、宿泊を伴う場合もあり) |
人間ドック検査終了後
時間 | 2~3週間後に郵送 ※受診クリニックによって検査結果期間・結果報告方法は異なります。 |
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選び方
施設や受診コースによって異なる
自身の気になる疾患のリスクに合わせて、検査コースを選んでください。例えば、全身の健康リスクをチェックしたいのであれば、スタンダードな検査コース。特定部位の疾患リスクを調べたい場合は、単独受診の検査コース。
複数の検査を組み合わせて疾患リスクを発見する確率を高めたい場合は、スタンダードな検査コースにオプションで検査項目を追加して、全身の健康チェックと気になる部位を検査するという、組み合わせも可能です。
検査内容や設備、費用から施設を選ぶ
人間ドックは、検査項目だけではなく、施設の選び方にもポイントがあります。健診内容の相談に親切に対応してもらえる施設を選ぶ必要な検査は全身に及ぶため、各検査を多数の施設で実施するより、1つの施設で実施した方が良い(施設により実施していない検査は勧めないのが通例のため、できない検査は、漏れがないように他施設で実施する)。
前回の結果と比較できるよう、毎回、同じ施設を選ぶ
人間ドックは1回受診すれば安心、というわけではありません。定期的に受診してその時点での健康状態を確認するとともに、これまでの結果との比較から、より早いタイミングでリスクを把握することが大切です。そうすることで、医師から継続的なアドバイスを得ることができるでしょう。
再検査や二次精密検査になった時の対応状況も考えて施設を選ぶ
再検査や二次精密検査の判定が見つかることも少なくありません。1~6か月の経過観察後の「再検査」が容易に実施可能な施設や、「二次精密検査」となると、最近は高度医療機器が必要な病院に受診する必要もありますが、複数の項目に対して、各々異なる病院に受診が必要になり大変ですので、健診施設である程度までの精密検査が可能な施設の方が、利便性もあり、また医療レベルが高いと考えられます。
日本人間ドック学会が認定した施設を選ぶ
日本人間ドック学会が定める、「機能評価認定施設」、日本総合健診医学会が定める「優良総合健診施設」。この2つの組織からこのような評価がされている施設があります。人間ドックの質や水準を示す一つの指標になるでしょう。
信頼ができ、検査を受けやすい場所を選ぶ
自宅や職場から近い施設を選ぶことは、定期的に受診する機会につながります。また、万が一疾患が発見された場合、施設がその疾患にふさわしい医師を紹介してくれるかも大切なポイントです。
この記事の監修ドクター
坂井橋クリニック:廣田 久佳
【略歴】
1976年 三重大学医学部 卒業
1994年 坂井橋クリニック 院長就任
【資格】
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医