乳がん検診とは?
乳がん検診とは、乳がんの発見を目的とする検査コースの総称です。女性にとって乳がんは、がんの部位別死亡数(2016年)では(大腸、肺、すい臓、胃の各がんに続いて)5位、年間1万4,015人が亡くなりました。また、がんの部位別罹患数(全国推計値:2013年)では1位となっています。そのため、乳がんリスクの早期発見は、受診者や家族はもとより社会的にも大きな意味を持っています。
実際の乳がん検診では、マンモグラフィ(乳房X線検査)や乳腺超音波(エコー)検査、乳視触診などが実施されます。また最近では、PEM(乳房専用PET)検査を実施する検査コースもあります。検査自体についても、健診施設や検査コースによっては、女性医師・女性検査技師が担当する場合もあります。
受診費用
乳がん検診の費用はおよそ3,000〜10,000円
一般的に乳がん検診の受診費用は、およそ3,000〜10,000円くらいが多く設定されています。これはマンモグラフィ検査のみ実施する場合や、マンモグラフィと乳腺エコーを合わせて行う場合など、検査の組み合わせによって異なります。受診する施設や地域によって極端に異なる傾向は見られません。
自治体や企業で検診を受けることも
自治体の乳がん検診は、2年に1度の頻度で受診することが可能です。受診に関する対象者へのお知らせや、受診できる期間は、自治体によって対応・設定が異なります。また、検診そのものを実施していない市区町村もあるので、事前に各自治体のがん検診窓口に詳細を問い合わせてみてください。なお、一般的に受診費用は無料、もしくは数千円程度の自己負担費用が発生する場合もあります。
自治体の補助を利用したマンモグラフィ検査による乳がん検診は40歳以上が対象です。自治体によっては視触診のみ、乳腺エコー検査のみを実施するケースもあり、その年齢は30歳代から対象となる自治体もあるようです。
職域検診は企業毎に設定されるため、20代から実施している場合もあります。およそ2年に1回の受診であることが多いので、このタイミング以外で気になった際や20〜30代の方には、受診の時期を任意で決められる自費での乳がん検診をおすすめします。
検査の必要性
がんに罹る女性の中で最も多いのは乳がん
女性におけるがんの部位別罹患率(2014年)は、乳房、大腸、胃、肺、子宮の順となっています。日本全国の乳がん罹患数は20歳代で320人、30歳代では3,614人と10倍以上です。さらに40歳代は15,673人となり60歳代までこのピークは続き、70歳代以降徐々に減っていきます(国立がんセンター統計による)。
このように、乳がんは決して珍しいがんではなく、早期発見すれば治る可能性が高いとも言われています。それにも関わらず、「乳がんは他人事」、「若いうちは大丈夫」と検診を受けない方が多いのも事実です。
そんな中、ひとりでも多くの方を乳がんから守ろうとピンクリボン運動が行われています。日本でも、10月には都庁をはじめとした街のあちらこちらでピンク色のライトアップが行われ、乳がん検診のポスターを見る機会が増えました。
乳がんが患者さん本人だけでなく、社会にとっても大きな問題であるとの認識が浸透してきた現れでもあります。
検査内容
施設や受診コースによって異なる
一般的な健康診断・人間ドックには含まれない乳がんの検査項目は、医療機関によってオプションとして追加する、またはレディースドック・婦人科検診のコースでも受診できます。
乳視触診 | 医師が直接胸に触り、しこりや皮膚のつっぱりがないかなどを見ます。 |
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マンモグラフィ(乳房X線撮影検査) |
マンモグラフィは、X線で乳房を撮影する検査です。検査は機械に片方ずつ乳房を挟み、押しつぶして撮影を行います。この検査で、乳房から脇の下にあるリンパ節にかけて、しこりの有無や大きさ、位置などがわかります。通常5分程度で終わる検査です。 発見できる乳がんの70%以上が早期ガンで、とくに石灰化のある乳がんの発見に適しています。 |
乳腺エコー検査(乳腺超音波検査) |
乳腺超音波検査はX線を使用しないので、妊娠中の人や妊娠の可能性のある人も検査可能です。ベッドに横になって片手を上げ、手を上げているほうの胸に超音波をあてて、はね返ってくる超音波(エコー)を画像化して異常がないかを調べます。マンモグラフィではしこりがはっきりと写らない場合でも、乳腺超音波検査では、しこりの良性、悪性の診断が可能です。 通常5~10分程度で終わり、痛みはありません。 |
予約〜検査
乳がん検診前日
準備 | 事前の食事や水分摂取に制限はありません。 |
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人間ドック検査当日
問診 |
問診では、過去に妊娠・出産・母乳の経験はあるか?家族に乳がんになった人はいるか?などを質問されます。 乳がんは自分で触ったり、見ることで異常を発見できる疾患でもあります。せっかくの機会ですから日頃痛みや出血、しこりなど気になっていることがあれば医師に聞いてみましょう。 |
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時間 | 1~2時間ほど |
乳がん検診終了後
時間 | 1~2週間後に郵送 ※受診クリニックによって検査結果期間・結果報告方法は異なります。 |
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選び方
女性が乳がん検診を受けやすくするための環境整備
医療従事者は男性でも女性でも、受診者の皆さんの健康を守ろうと診察や検査に従事しています。それでも、乳房を男性に診られることに抵抗があって乳がん検診を受けない方がいることも事実です。しかし健康管理とリスクの早期発見のためにも、恥ずかしがらずに定期的な受診を心がけましょう。
マンモグラフィ検査が一般的ではありますが、自治体によっては視触診のみを行っている場合があります。しかし国立がん研究センターの乳がん検診ガイドラインでは、視触診単独での対策型検診は推奨されていませんので、マンモグラフィや乳腺エコー検査と併用しましょう。
また、近年注目されている高濃度乳房(デンスブレスト)の方は、マンモグラフィでは乳がんの発見がしにくいといわれています。そのため乳腺エコー検査との併用を検討しましょう。
多くの健診施設は日曜日が休みですが、多忙で平日に受診できない方のために10月第3日曜日はマンモグラフィ・サンデーの催しが行われています(ピンクリボン運動の一環で参加施設では10月第3日曜日にマンモグラフィが受けられます)。
まずはお近くのエリアで、乳がん検診が受診できる医療機関を探してみましょう。レディースデーが設けられているかなど、施設を比較しながらご自身に合った検査コースを見つけてみてください。
この記事の監修ドクター
【略歴】
1991年 東京医科大学 卒業
1991年 東京医科大学病院 産婦人科
2003年 山王病院 リプロダクションセンター
2004年 堀産婦人科 院長就任