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心臓ドックとは、心臓病(心疾患)リスクを調べる検査コースの総称です。心臓病は、がん・脳血管疾患とならぶ三大死因といわれており、また、心臓病には、心筋梗塞・狭心症・弁膜症・危険な不整脈などがあります。とくに急性心筋梗塞は、突発的に発症して数時間以内に死亡するケースもめずらしくありません。そのため、心臓病の予兆である動脈硬化の段階でリスクを見つけ、できる限り早期に対策をとることが大切とされています。

この心臓病リスクの発見が心臓ドックの大きな役割です。心電図検査を基本として、血液検査(トロポニン、BNPなど)や心臓CT検査(冠動脈の動脈硬化の進行度などをチェック)、心臓超音波検査(心エコー)、頸動脈超音波(エコー)検査(全身の動脈硬化をチェック)などが実施されます。

受診費用

心臓ドックにかかる費用はおよそ1万~20万円

心臓ドックの料金は一律ではなく、受診する医療機関によって異なります。なぜなら、検査項目の内容によってかかる費用が異なるからです。実施される項目が多くなれば、料金も高くなります。医療機関によって設定している検査項目が異なるため、1万~5万円と料金に幅はありますが、この間で標準的な検査を受けることができます。また、複数の検査で詳細に心臓リスクを調べたいという場合は20万円を超えるようなケースもあります。

心臓ドックは基本的に保険適用外

心臓ドックは原則として症状がない方が心疾患の有無やリスクについて調べるものですので保険適用外になります。「胸痛を認める」「不整脈がある」などの理由で医師にかかりたい場合には保険医療機関を受診しましょう。その場合は、ドックのような総合コースとして検査を受けるのではなく、必要な検査から順に受けることになります。また検査費用には健康保険が適用され、支払い金額の1割から3割を受診者が負担します。

一方、健康診断などの病気予防の目的で心臓ドックを受診する場合は、心疾患の既往に有無にかかわらず保険適用外のため、全額が自己負担になります。

加入している健康保険組合によって補助金利用も

加入している健康保険組合によっては、心臓ドック受診のための補助金制度が設けられていることがあります。補助が受けられる対象年齢、受診回数、補助金額の上限など、各条件は加入している健康保険組合によって異なるので、制度があるかどうかは加入組合に問い合わせてみてください。

受診してからでは、補助金申請ができないケースも多いので、心臓ドックの受診を検討している人は必ず、受診前に条件や申請方法を確認しておくことがポイントです。

検査の必要性

心不全のサインを見つけたら、心臓ドックを受診しよう

がんに次いで、日本人の死因の第2位でもある心疾患は、心臓本来のポンプ機能が低下し、血液を十分に循環させることができなくなった「状態」を指します。そして、この状態によってもたらされる症状は、さまざまです。

あらゆる心臓病が行きつく最終的な状態である心不全を予防するためには、心筋梗塞や狭心症のリスク、さらには動脈硬化の状況を定期的にチェックすることが重要です。

また、心臓に負担をかける肥満に注意する、減塩や動物性脂肪の摂取を減らし、タバコや過度の飲酒を控えて適度な運動をするなど、普段の生活から気をつけることも心不全の予防法の一つです。もし、家族にそういったリスクを抱えている人がいるのなら、たとえ今は深刻な健康問題がなくても、改善をすすめるのが家族の一員としての愛情かもしれません。

すでに疲労感や息切れを感じている(あるいはそう見える)のであれば、「年のせいだ」と簡単に見過ごさずに、なるべく早く心臓ドックを受診して、予防に努めてください。

心臓ドックと人間ドックの違い

心臓ドックで調べる対象疾患には、(1)虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、(2)高血圧性心疾患、(3)心筋疾患(肥大型心筋症や拡張型心筋症など)、(4)心臓弁膜症、(5)不整脈やその原因となる心電図異常(Brugada症候群など)などがあります。

通常の人間ドックでは安静時の心電図検査を調べる程度なので、これらの心疾患を見つけることは困難です。心疾患スクリーニングのためには「がん」や生活習慣病の発見を主目的とした、通常の人間ドックとは別に心臓ドックを受ける必要があります。

検査内容

施設や受診コースによって異なる

検査項目は、冠動脈CT検査(心臓CT)・心臓超音波検査(心エコー)・頚動脈超音波検査(頚動脈エコー)・心電図(負荷心電図を含む)などを組み合わせた検査コースがあったり、MRI/MRA、心不全の程度を測定するBNP、動脈硬化検査といった検査項目を各医療機関が設定していたりするので、コース内容を今の健康状態や年齢と照らし合わせて、必要な検査を見極めるようにしましょう。

身体測定(身体計測) 身長・体重・BMI・腹囲測定を行います。
血圧測定(血圧脈波検査) 最高、最低血圧を測定します。
胸部エコー検査(心臓エコー/心エコー/心臓超音波検査) 超音波を使って、心臓の内部構造・機能・心臓の動き・弁の状態や血流に異常がないかを検査します。
頚動脈エコー検査(頚動脈超音波検査) 全身の動脈硬化の指標となる検査で、将来の心筋梗塞の危険性を予測します。
胸部X線検査(胸部レントゲン検査) 心肥大・心拡大・心奇形・胸部大動脈瘤などが分かります。
心電図 安静時・負荷時・24時間の状況に応じて不整脈や心筋虚血があるかを調べます。
冠動脈CT検査(心臓CT)

狭心症や心筋梗塞の原因は、心臓に血液を送る冠動脈の動脈硬化です。CT画像として冠動脈を直接確認することで、発症の危険性を評価します。

冠動脈CTは造影剤を投与して検査精度を高め検査を行います。造影剤も改良がくわえられ副作用(吐き気やじんましんなど)が減少してきました。アレルギー体質・腎機能障害がある・過去に造影剤で体調が悪くなった人は検査前に医師に伝えましょう。

息を吸ったり止めたりしながら検査を進めるため、最初に練習があります。息を止める時間は毎回10~15秒ほどで、全部で約20分で終了します。検査後は30分ほど安静を保ち、とくに問題がなければ終了です。

血液検査 肝機能、腎機能、脂質、糖代謝、貧血の有無などを調べます。
BNP 血液検査で血中のBNPの値を調べることにより心不全の程度を診断することができます。
動脈硬化検査 血管の硬さや詰まりの程度を調べます。

予約〜検査

心臓ドック検査前日

準備 含まれている検査項目により食事・飲み物制限のあるものがありますので、事前に確認しましょう。糖尿病などの薬を服用している場合は、事前に受診施設に確認しましょう。

心臓ドック検査当日

時間 3時間ほどです。

人間ドック検査終了後

時間 通常、数週間後に郵送で届きます。
検査後

現在の動脈硬化の程度と将来の動脈硬化に対する危険性の評価を行い、予防のために必要な日常生活に関するアドバイスを行います。

造影剤の影響で体調を崩すおそれがあります。いつもと違うと感じたら迷わずに検査を行った施設に連絡しましょう。

選び方

平日の受診が難しい場合「土日祝日でも検査ができる」

平日は会社勤めをしている人が大半である事実を踏まえると、平日に病院に行き、一定の検査時間を確保することは難しいでしょう。そのような場合は、大半の人が休日にあたると思われる土曜日や日曜日、祝日に検査を受け付けている医療機関を選ぶことをおすすめします。

とはいえ、心臓エコー検査と心電図(安静時)が中心のコースでも、受付から検査終了まで1~3時間程度の時間がかかるため、たとえ休日であっても都合がつきやすい日を選択してください。

調べてほしい特定の部位や、心臓以外も調べてほしい場合「オプション検査がある」

特定の部位や心臓以外の部位も調べる場合は、オプション検査を追加できる、もしくは、検査コースに人間ドックや脳ドックなど、心臓ドック以外の検査が可能な医療機関を選びましょう。オプション検査を追加することで他の疾患リスクを調べることができます。

女性で、男性の目が気になる場合「女性専用エリアがある」

医療機関によっては、女性と男性が同じ待合室で待機する場合もあります。また、受ける検査によっては下着を着用せずに検査着に着替えることもあるため、男性の目が気になる女性もいるでしょう。

そのようなときは、「女性専用フロア」を設置している受診施設を選ぶようにしてください。女性が受診しやすい施設づくりに取り組んでいたり、男女で検査を分けていたりする医療機関も存在します。

螢田診療所:小澤 優樹

この記事の監修ドクター

螢田診療所:小澤 優樹

【略歴】
1980年 昭和大学医学部 卒業
【資格】
日本循環器学会認定 循環器専門医
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本超音波医学会認定 超音波専門医

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