人間ドック
食後高血糖とは|健診結果だけではわからない隠れ糖尿病の恐れ
一般的な健診でわかる血糖値(=空腹時血糖値)は正常なのに、実際には糖尿病予備軍または糖尿病と思われる人が増えています。食後の血糖値が高い場合は糖尿病予備軍と考えられ、生活習慣病をはじめ各種疾患の発症リスクを高めることから、「食後高血糖」は重要視されている指標です。
この記事では、自覚症状がなく検査しない限り知ることのできない「食後高血糖」について詳しく説明します。
- 目次
食後高血糖|糖尿病予備軍において重要な指標のひとつ
食後高血糖の概要について、詳しく解説します。
見落とされやすい「食後高血糖」とは何か
食後高血糖とは、名前が示す通り食事後の血糖値が異常に高いことです。食事をすると血糖値は高くなり、2~3時間以内に正常値(110mg/dl未満)に戻るのが一般的です。しかし、血糖値が低下せず長い時間140mg/dl以上の値が続く場合に食後高血糖と判断されます。食事のたびに異常な値を示し、その状態を繰り返すことが問題です。
糖尿病の初期症状と言っても過言ではない食後高血糖は、その多くが時間がたつと次第に下がり、正常な数値に戻ります。そのため通常の健診で行われる空腹時血糖値では異常なしと判断されることから、食後高血糖を見逃してしまうのです。それゆえ、食後高血糖は「隠れ糖尿病」と呼ばれるようになりました。気づかないうちに、重度の糖尿病に進行してしまう危険が潜んでいます。
食後高血糖が起こるしくみ
食事を取り糖分が吸収されると血糖値は上昇しますが、反応して分泌されるインスリンの働きにより、血糖値はすぐに下がります。血液中のブドウ糖(血糖)がさまざまな臓器や細胞に取り込まれるため、数時間で正常値に戻るのです。
インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。このインスリンが十分に働かなくなると、食後の血糖値がすぐに下がらなくなります。この状態が糖尿病です。
血糖値は常に変動していて、糖尿病と診断されていない人でも食後の血糖値が140mg/dL以上になることはあります。食後の短時間に血糖値が急上昇し、その後急降下する食後高血糖は、別名「血糖値スパイク」とも呼ばれています。
食後高血糖の裏にひそむ疾患リスク一覧
食後高血糖はさまざまな疾患を招く引き金です。引き起こされる恐れのある疾患をまとめて解説します。
【疾患リスク】
リスクのある疾患名 | 概要・あらわれる現象など |
---|---|
糖尿病 | 血液中の血糖が増える だるい、のどがかわく、尿が増える、食欲増進、足がつる、など |
動脈硬化 | 血管が衰え、血液の通り道が狭くなる 心臓や脳、肝臓に起こりやすい |
心筋梗塞 | 動脈硬化が進行し冠動脈がつまり心臓の一部が壊死する 胸のしめつけ感や痛みを生じる |
脳卒中 | 動脈硬化が進行し、脳の血管がつまる、または破れる 身体の片方に麻痺やしびれが生じる |
脂質異常症(高脂血症) | 血液中の脂肪分の濃度が異常となる 動脈硬化の最大の原因 |
網膜症 | 糖尿病の合併症で網膜が障害を受け、視力が低下 緑内障や失明に発展の恐れ |
すい臓がん | すい臓に生じるがん 進行した場合、腹痛・食欲不振・腹部膨満感を生じる |
まずは自分が食後高血糖かどうかを知りましょう
食後高血糖は検査で調べることが可能です。いくつかの検査方法があるので具体的に紹介します。
血液検査データから|HbA1cの数値を把握する
血液検査でチェックする項目HbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)は、赤血球に存在するヘモグロビン(Hb)にブドウ糖が結合したもので、糖尿病診療において血糖コントロール状態の指標とされます。採血時点から1~2カ月さかのぼった平均の血糖値を反映すると考えられています。
基準値 | 5.5%以下 |
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要注意 | 5.6~6.4% |
糖尿病の恐れ | 6.5%以上 |
HbA1cが高いということは多くの糖がヘモグロビンに結合していることを指し、血糖が高いということを示します。つまり、HbA1cは食後血糖値とも関連性が高いと考えられています。
ブドウ糖負荷試験(血液検査)を受ける
もうひとつ、食後高血糖かどうかを知るための方法として、ブドウ糖負荷試験があります。これは、一定量のブドウ糖水溶液(ブドウ糖75g含有)を飲み、1時間後および2時間後の血糖値の推移をチェックするもの。空腹時血糖値と比較することにより、糖尿病の診断に役立つ血液検査です。
75gブドウ糖水溶液を飲んで2時間後の血糖値
基準値 | 140mg/dl未満 |
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要注意 | 140mg/dl以上200mg/dl未満 |
糖尿病の恐れ | 200mg/dl以上 |
人間ドックの一般的なコースでは含まれないケースが多いかもしれませんが、オプションでの追加や、1泊2日の宿泊ドックのなかで提供する受診施設があります。希望する場合には事前に受診施設へ確認をしてみてください。
日常生活から改善できることは?
食後高血糖予防の基本は、食事と運動です。日々の生活を見直して改善していきましょう。
食物編
- ひと口ごとに箸をおくことを意識し、ゆっくりと食べる
- 野菜→タンパク質→炭水化物の順に食べ、糖の吸収をゆるやかにする
- 血糖値が上がりにくい野菜、きのこ、海藻など食物繊維を摂取する
- 血糖値が上がりやすい炭水化物(ご飯やパンなど)を控える
- 血糖値が上がりにくい糖質指数の低い食材(玄米や豆類)を摂取する
運動編
- 血糖値が上がる食後30分から2時間の間に運動し、血中のブドウ糖を消費させる
- ウォーキングや水泳など有酸素運動を取り入れる
- 脂肪を消費するために筋肉トレーニングをする
- 食後に軽い体操をする習慣を身に付ける
まとめ|糖尿病の早期発見は食後血糖値に注意
通常の健診でわかる空腹時血糖値のみでは、糖尿病かどうかを判断することはできません。HbA1cの数値を確認したり、人間ドックを活用してブドウ糖負荷試験を受けることにより、「食後血糖値」も把握することをおすすめします。そして日々の生活を見直し、健康管理していきましょう。