人間ドック
胃カメラはやっぱり怖い?|人間ドック・胃の検査のイロイロ
この記事の監修ドクター
三井タワークリニック 院長
斎藤 達也
1979年 国立旭川医科大学 卒業
1983年 国立旭川医科大学院 修了
1983年 国立旭川医科大学内科学第2講座助手
1983年 私立昭和大学附属豊洲病院消化器科助手
1986年 中央みなとクリニック 開設
胃カメラ検査は苦しい、痛い。そんなイメージがありますが、麻酔の使用などで受診者のリクエストに応じてくれる医療機関も増えてきました。また、最近は検査機器の発達で経鼻内視鏡など苦痛を減らす工夫や取り組みが進んでいます。胃カメラ検査のメリットを交えながら、人間ドックを選ぶ際に最も悩ましい胃の検査方法について紹介します。
そもそも、胃カメラ検査とは?
胃カメラ検査とは、内視鏡を使って上部消化管(食道から胃、十二指腸まで)の内部を目視で確認し、病変の有無をチェックする検査方法です。胃部に病変が発見された際には生検を行い良性・悪性の診断を行うことや、がんなどの疾患が見つかった場合もスムーズに治療へと移行できる点で、胃バリウム検査や胃ABC検査とは性質が異なります。
人間ドックの中での位置づけ
胃カメラ検査(上部消化管検査)は人間ドックの検査項目に含まれることが一般的で、通常は胃カメラ検査か胃バリウム検査のどちらかが実施されます。胃がんリスクを注視して、検査項目に胃カメラ検査を標準設定している医療機関もあれば、受診者が胃バリウム検査を胃カメラ検査へと変更、または胃カメラ検査自体を追加するなど、オプションとして選択ができるよう設定している医療機関もあります。
胃カメラ検査の仕組み
胃カメラ検査は、胃内視鏡という先端にカメラ(スコープ)のついたチューブを、口または鼻から上部消化管へ挿入して行う検査です。チューブを体内に挿入し、カメラを通して食道、胃、十二指腸に異常がないかを観察します。
カメラで内部をくまなく撮影するほか、検査中にTVモニターで状態を確認しながら病変の発見につなげます。検査自体は大体10分程度で終了することが多いです。発見されたポリープや病変が良性か悪性かを診断する場合は生体検査を行うため、後日検査結果の確認が必要です。
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検査で分かる病気・病変
胃内視鏡で行う胃カメラ検査は、胃がん、食道がんなどの悪性疾患、逆流性食道炎、ポリープ、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など、上部消化管で患う恐れのある疾患全般の発見に役立てられます。
同じ胃部検査でも、胃バリウム検査が胃全体の形を画像にすることで狭窄箇所を発見したり、粘膜へのバリウム付着具合で異常を発見するのに対し、胃カメラ検査は内視鏡で内部を直接確認するため、ポリープやがんを疑う病変そのものを確認できるのが特徴です。
疑わしい病変が見つかった際には、胃の内部に直接挿入している内視鏡には鉗子(かんし)と呼ばれる器具を用いてその場で採取することができます。一度の検査で病変の悪性・良性の判断まで行えることが、内視鏡検査の特徴です。
胃カメラの種類
胃内視鏡には、口からチューブを通す「経口内視鏡」と鼻からチューブを通す「経鼻内視鏡」とがあります。経口内視鏡は直径10mmほど、経鼻内視鏡は直径5mmほどです。
経鼻内視鏡はチューブが細いため検査時の苦痛は軽減されやすいですが、経口内視鏡に比べると画像精度がやや劣り、細部を拡大して観察することは難しいです。早期がんなど細微な病変を観察するには、挿入時の苦しさは強めでも経口内視鏡の方が得意といえます。どちらの内視鏡で受診するかは、今の健康上状況を含めて事前に医師へ相談するとよいでしょう。また、医療機関によっては経口内視鏡のみ、もしくは経鼻内視鏡のみと胃内視鏡の種類を限定していることもあります。検査コースの内容をよく確認してからの受診するよう、注意してください。
胃カメラ検査を受けている時の苦痛って?
胃カメラ検査は、苦しい・痛いというイメージを持たれがちです。その苦しさの原因は、チューブが喉を通るときの違和感や不快感でしょう。
経口内視鏡は口からチューブを通すので、喉の奥が刺激されて嘔吐感は強いです。一方の経鼻内視鏡は、経口内視鏡よりも細めのチューブを鼻から通すので嘔吐感は少ないでしょう。事前に検査の流れや注意事項を確認しておくと安心です。
苦痛を軽減する工夫や取り組み
近年は胃内視鏡の苦痛軽減のため、検査時に麻酔や鎮静剤を使用する医療機関も増えてきました。
鎮静剤の使用
鎮静剤を使用すると眠ったような状態で受診ができるので、胃内視鏡による不快感や違和感を感じることなく検査を終えることができます。ただし、鎮静剤を使用すると検査終了後に30分〜1時間ほど、ベッドで横になって休憩をとる必要があります。検査にかかる時間が通常よりも長くなるため、検査当日は時間に余裕を持ったスケジュールで臨むことになります。
ほかにも、自動車や自転車での来院ができなくなるなど、移動手段に制限がかかります。基本的に徒歩か公共交通機関を利用する必要がありますので、受診する医療機関の場所も考慮しましょう。
はじめから鎮静剤の使用が前提とされているケースや、別途料金を払いオプションで追加するケースなど、鎮静剤使用の設定は医療機関によってさまざまです。使用を希望する際には、別に費用が発生するかどうかも併せてチェックが必要です。
麻酔の使用
鎮静剤は点滴でウトウトと眠ったような状態にしますが、麻酔の場合はゼリーやスプレーで表面だけを痺れさせる「表面麻酔」を使用することが一般的です。表面麻酔は手術で使用するような全身麻酔ではなく、歯科で治療に使用する麻酔と同じ種類と考えましょう。部分的に感覚を鈍くさせる麻酔なので、検査中の意識もあり、身体への負担が少なくて済みます。
ただし、気を付けなければいけないのは、麻酔によるアナフィラキシーショックです。
ショック症状が起こると呼吸困難や血圧低下など、非常に危険な状態となります。使用に際しては必ず事前に意思確認がありますので、不安なことはすべて医師に相談しましょう。
鎮静剤と同じく、はじめから麻酔の使用が検査内容に含まれているケースと、別途料金を払ってオプションで追加するケースがあります。また、静脈麻酔と書かれている場合は、麻酔ではなく鎮静剤のことを指します。不明点があれば事前に医療機関へ問い合わせておくと安心です。
検査中の胃の張りについて
胃カメラ検査中には、内視鏡から胃の中に空気が入ることがあるため、人によっては胃やお腹が張ったような感覚になります。検査後にゲップやガスが出れば症状は自然に和らぎますが、検査中から苦しさや、場合によっては痛みがあらわれることもあるかもしれません。
胃やお腹の張りを軽減するため、「炭酸ガス(二酸化炭素)送気装置」を導入している医療機関もあります。この装置は二酸化炭素の性質を利用して、検査終了時に膨満感や不快感を軽減させる働きがあります。内視鏡受診者の苦痛軽減のために医療機関が導入している設備なので、装置を使うことに対して別途費用負担は発生しません。受診する医療機関によっては導入していないこともありますので、検診コースの検討ポイントの一つにするとよいでしょう。
苦痛を減らすコツの紹介
胃カメラ検査は喉の奥にチューブがあたって「オエッ」となりやすいのが難点です。喉に力が入るとチューブの刺激がより強く感じられます。喉や首、肩の力を抜き、なるべく緊張せずに検査を受けられると苦しさが軽減されます。経口内視鏡での検査であれば、口を大きく開けてゆっくりと鼻呼吸を行いましょう。経鼻内視鏡では口呼吸ができるので、静かにゆっくりと腹式呼吸を維持しましょう。とにかくできるだけリラックスすることが大切です。
鎮静剤や麻酔以外にも、専用のマウスピースを使うことで嘔吐感を防ぐこともできます。医療機関によってどのような苦痛軽減の取り組みを実施しているかを確認しましょう。
まとめ:少しでも苦痛のある検査は前もって正しい理解を
胃カメラ検査で苦痛を完全に取り除くことは難しいですが、胃内部の状態を直接チェックして病変を早期発見・早期治療できるというメリットはとても大きいものです。内視鏡に関する正しい知識や苦痛軽減の方法を事前に得ることで、受診のための心構えをして検査に臨めます。
胃内視鏡を初めて受ける方は、どの程度苦しいのかあまりピンとこないかもしれませんが、今後定期的に受診することも考え、リラックスできる医療環境を選択してほしいと思います。