脳ドック
MRAとMRIでわかる病気のリスクとは?|検査の違いと脳ドックについて
この記事の監修ドクター
沼田脳神経外科循環器科病院 院長
赤尾 法彦
厚生労働省が令和6年(2024)9月に公開した『人口動態統計2023』によると、死亡原因の4位となっている脳卒中(脳血管疾患)の年間死亡者数は約10万4千人にのぼります。
また、年代別の脳卒中の患者数は45~54歳で4万7,000人、55~64歳で11万2,000人となっています(2017年)。50代は本格的に脳卒中患者が増える年代といってもよいでしょう。
そんな脳卒中のリスクを調べる検査として、MRI検査とMRA検査が注目されています。脳ドックにも含まれる2つの検査は、それぞれどのような検査を指しているのでしょうか。
この記事では脳卒中がどういう疾患か、そしてMRI検査とMRA検査でわかることや検査内容の違いについて解説していきます。脳ドックの受診を検討している方はぜひ参考にしてみてださい。
40代半ばから急増|脳卒中とはどういう状態?
まず「脳卒中」とはどういう状態かというと、脳の血管がつまる(虚血)、もしくは破れる(出血)ことによって脳の神経細胞が障害される疾患のことを指します。
脳血管疾患とも呼ばれ、その原因や症状によって下記の4つに分類されています。
- 脳の動脈がつまる「脳梗塞」
- 脳内の動脈が破れる「脳出血」
- 脳動脈瘤が破れる「くも膜下出血」
- 脳の動脈が一時的に詰まって神経症状を呈したものの、短時間で再開通して、症状が消失する「一過性脳虚血発作(TIA)」
発症の前段階では自覚症状のないケースが多いことで知られていますが、ひとたび発症すれば重い後遺症が残ったり、生命に危険が及んだりする可能性の高い救急疾患です。
脳卒中は寝たきりになる原因のトップ
厚生労働省が2021年(令和3年)9月に公開した『人口動態統計2020』によると、2020年(令和2年)の脳卒中は死亡原因の4位となっています。
具体的な人数は、「脳卒中」全体で10万2,978人。そのうち、「脳梗塞」5万6,864人、「脳内出血」3万1,997人、「くも膜下出血」1万1,416人、「その他の脳血管疾患」2,701人です。
また、同省が2019年3月に発表した『患者調査の概況2017』によると、年代別の脳卒中の患者数は45~54歳で4万7,000人、55~64歳で11万2,000人となっています。50代の年齢は、本格的に脳卒中患者が増える年代といってもよいでしょう。
さらに、同省が2019年に実施した『国民生活基礎調査』(介護保険法で認定された要介護者・要支援者の合計7千人を対象)によると、介護保険法で認定された「要介護4」「要介護5」の方の主な原因は「脳血管疾患」がもっとも多く、全体の20%以上を占めています。重度になるといわゆる「寝たきり」の状態となりますので注意が必要です。
参考:厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計」「2019年 国民生活基礎調査の概況」
MRIとMRAの違い
脳梗塞や脳出血といった脳卒中のリスクをできる限り早期に発見し、適切な対応につなげることが脳ドックの大きな役割です。
そして、その脳ドックの中心的な検査項目が、頭部MRI検査と頭部MRA検査です。通常はセットで行われ、名称は異なりますが使用する医療機器は同じです。また、磁力を用いた検査なので、被ばくの心配もありません。
MRI検査は「脳」の断面画像を得るもので、解像度が高く、脳や脊髄といった中枢神経に対する検査方法として適しています。一方、MRA検査は「脳血管」を立体的に抽出する検査で、造影剤(画像診断検査をわかりやすくするための薬剤)を用いることなく血管の画像を得られるため、安全性に優れています。
それぞれの違いを見てみましょう。
MRI検査:脳の断面画像を得る検査
MRI(磁気共鳴画像撮影法)検査は、身体に電磁波をあてることで細胞に含まれる水を共鳴させ、その信号から、脳の断面画像を得るものです。
頭部MRI検査は、MRI装置を用いて頭部の断層写真を撮影する検査です。脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)の検出やリスク発見、特に虚血性の脳卒中である「脳梗塞」の検出力に優れています。
MRA検査:脳血管を立体画像化する検査
MRA(磁気共鳴血管撮影法)検査も、電磁波を用いますが、血流の信号のみを処理することで、造影剤を用いることなく脳血管、特に脳動脈の形態を立体画像化します。
頭部MRA検査も、MRI装置を用いて頭部の血管の状態を立体画像化する検査です。
脳動脈の狭窄やくも膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)や、脳動静脈奇形の有無など、虚血性及び出血性脳卒中のリスク発見に役立ちます。
オープン型MRI:閉塞感が苦手な方の負担を軽減する装置
一般的なMRI検査の撮影装置はドーナツ型(トンネル型)と呼ばれ、横たわって入っていくイメージの装置です。しかしこの形状から、閉所恐怖症の方は不安を覚えたり、撮影中の反響音が気になるという方もいるでしょう。
一方でオープン型と呼ばれる、横たわったところに傘が覆いかぶさるイメージの装置があります。ドーナツ型にくらべて視界が開けている構造で、周囲を囲む壁が少ないぶん音の反響も軽減されます。閉塞感が不安という方でも受診しやすいことが特徴です。
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MRI検査、MRA検査でわかること
MRI検査やMRA検査には、それぞれ早期発見しやすい脳卒中リスクの種類があります。
頭部MRI検査は脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の潜在を発見するのに有用で、頭部MRA検査は、脳梗塞の原因になる「動脈の狭窄」やくも膜下出血の原因となる「未破裂脳動脈瘤」といった脳卒中のリスクを発見するのに有用です。
つまり、頭部MRI検査/頭部MRA検査をセットで受けてこそ脳卒中の潜在やリスクを調べることができるのです。そのため、脳ドックの多くは頭部MRI検査/頭部MRA検査をセットで設定しています。
MRIとAI(人工知能)で認知症リスクがわかる時代
超高齢化社会といわれる現代の日本で、誰もが少なからず認知症への不安を持っていることでしょう。アルツハイマー型認知症の初期段階では、記憶を司る「海馬」の萎縮が見られます。近年ではMRI画像とAIを活用して海馬の体積を測定し、認知症の発症時期を推測できる検査が登場しています。
【東京都港区】東京脳神経センター
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【名古屋市北区】大隈病院
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【清瀬市】武蔵野総合クリニック 清瀬本院
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脳梗塞のリスクを調べるために、頸動脈を検査することも
虚血性脳卒中である脳梗塞は、頚部の動脈の狭窄や閉塞が原因で生じることもあります。そのため、脳ドックに「頸動脈超音波検査(エコー検査)」や「頸動脈MRA検査」が検査項目に追加されている場合もあります。
一種の老化現象とも言える動脈硬化は、すべての脳卒中に関するリスク要因、いわば、あらゆる脳卒中の前段階です。頸動脈超音波検査や頸動脈MRA検査では、心臓と脳の間の頚部を走行する頸動脈の動脈硬化の程度を調べることで、脳卒中リスクの早期発見に役立てます。
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まとめ:50代で脳ドック受診の検討を。MRI/MRAはセットで受診しましょう
脳卒中の潜在を調べるMRI検査、脳卒中のリスクを調べるMRA検査が脳ドックの主体です。脳の健康状態を把握するためにも両方の検査を受け、生活習慣の改善や予防治療の早期開始につなげましょう。
動脈硬化のリスク要因となる「高血圧」「糖尿病」「喫煙習慣」「高コレステロール血症」「肥満」を持つ方は、脳卒中の罹患リスクもそれだけ高まります。加齢によっても罹患リスクが高まるため、脳卒中リスクが本格的に高まる50代の方はすぐにでも脳ドックの受診を検討し、定期的な受診を心がけましょう。
脳ドックの受診費用は2万円代が一般的です。検査時間は10~20分ほどで、結果は通常数週間後に届きます。中にはほぼ全身のがんリスクを調べるPET-CT検査とセットで設定されているケースもあるので、がんリスクを調べたい方の需要に応える検査コースといえるでしょう。
脳ドックを受診できる施設は、エリアごとに検索でき、検査内容や費用を比較することができます。受診施設によって異なるため、お近くの受診施設で確認してみましょう。